「私、ずっと好きな人がいたのに、家のためだと思って諦めようと思ってた。それも仕方ない事なのかなって、お見合いをしたけど……やっぱり嫌」

りぃの好きな人は、凪くんだ。予感ではなく、確信に近くそう思う。りぃの目には初めから、凪くんしか映っていなかったから。

「私、凪が好きなの、だから縁談は受けない」

「里衣子……いいのか?幸せになれるチャンスを逃すんだぞ」

「あのね、私は好きな人と一緒でなければ、幸せになんてなれないんだよ」

りぃが凪くんに視線を移すと、その瞬間、凪くんの目からも涙が落ちた。

「今回の事は、私が引き金なんだもん。凪の罪は私の罪と同じ、罰するなら一緒に罰して」

「すみません、俺は、救いたかったのに巻き込んだ」

凪くんは心の痛みに耐えながら、言葉を絞り出す。

「俺の浅はかな行為で……守るだなんて、聞こえの良いエゴだな。本当はお嬢様を誰にも取られたくなかったんです、俺は」

凪くんはそう言って、自嘲的な笑みを浮かべた。そんな凪くんに、りぃは困ったように微笑む。

「何言ってるの、私はその凪の気持ちが嬉しいのに」

「お嬢様、あなたって人は……」

そこまでして、互いを想える恋なんだ。
ただ、熱しては冷める、薄っぺらい恋ではなくて、自分の一生を捧げたいと思うほどに人を想う気持ちが2人にはある。

「……はぁぁ、全く、娘を罰しろなどと……私に出来るはずがないだろう」

すると、深いため息をついて、困ったようにりぃのお父さんが言った。2人は「え」と驚きを隠せない様子ででお父さんを見上げる。