「……凪、大変な事をしてくれたな!!」
りぃのお父さんは、凪くんをすごい剣幕で怒鳴った。凪くんは深く頭を下げる。
「旦那様、申し訳ありませんでした。全ては俺がお嬢様に恋した故の罪です。どんな罰も受けます」
「すぐに警察に突き出してやる」
「はい……ただ、お嬢様は自由にしてあげてください。これだけは、どうか聞き届けてくださいませんか」
床に膝と両手をつくと、凪くんは頭を下げた。
こんな時まで、りぃの心配をする凪くんを見て、心からりぃの事が大切なのだと伝わってくる。
最後まで好きな人のために頭を下げる、その健気な姿に涙が滲んだ。
「……凪、もういい」
「え……お嬢様……?」
りぃは静かに凪くんの隣に座ると、そのまま床についていた凪くんの手に自分の手を重ねる。
「初めから、私がお父さんに自分の気持ちを伝えられてたら、凪が手を汚すことは無かったんだ」
「違う、これは俺が勝手にやった事です!」
「ううん、謝らせて……。ごめん、ごめんっ、凪っ」
重ねただけの手を、今度は強く握ったのが見えた。声を上げて泣き出すりぃに、今すぐ駆け寄って抱きしめてあげたい。
だけど、その役目は私じゃない。
それにりぃは今、隠してきた自分の気持ちに向き合おうと頑張っているから、私は見守る事にした。
「……お父さん、私ね、今まで言いたくても言えなかった事があるの」
「言えなかった事……だと?」
涙を流したりぃを、困惑したように見つめ返すお父さん。そんなお父さんを見上げるりぃの目には、迷いは消えていた。親友の決意を見届ける、だから頑張れと心の中でエールを送る。