「それに、幽霊の仕業にしたのは、自分の罪で他の誰かに疑いがかからないようにするための苦肉の策だろ」

「はは……鋭い人だな」

凪くんのその言葉が、拓海先輩の言葉を肯定していた。

「ただ、倉庫の鍵の入手方法だけがわからなくてな。里衣子さんの事を持ち出して、自白するよう誘導させてもらった」

「そうだね、俺はお嬢様には弱いから、嘘は言えないんだ。うまいもっていき方だと思うよ」

もったいぶってたのは、そのためだったのだ。全てを明かすにはまだわからない部分があったから、そこを突かれて逃げられないように先に罪を認めさせた。本当に拓海先輩は探偵みたいだなと思う。

「鍵は文さんから前日に借りてたんだ。旦那様から運んでほしい物があるって嘘をついてね」

「じゃあ、あれは嘘だったのかい?」

「文さんすみません、騙してしまって……」

「凪くん……」

凪くんは信頼されていたんだろう。だからこそ、大事な倉庫の鍵も文さんは貸したんだ。だから文さんも凪くんを責めることはせず、同情するような目を向けている。

「それからお前、鏡を割った時に怪我をしているな」

「あぁ、軍手で隠してたんだけどね……」

凪くんが軍手を外すと、拓海先輩の言ったように切り傷があった。これでもう、言い逃れはできない。