真実を知りたいような、知りたくないような気分だった。
「レオンが警戒心を抱かない存在……つまり邸の人間だ」
「なっ……君は、邸の人間を疑っているのか!」
今にも飛びかかってきそうなりぃのお父さん。その気持ちもわかる、ずっと一緒に過ごしてきた人達なんだから。
「里衣子さんは、壊れた鏡の取引先の長男と縁談があったそうだな」
「それは……はい」
答えずらそうに、りぃの表情が陰った。
「里衣子さんは、それに乗り気じゃなかったんじゃないか?」
「っ……それは……」
お父さんの手前、りぃは言葉を詰まらせる。
「なにを、これは両家にとってもいい縁談なんだぞ。不満なわけがないだろう」
そっか、お父さんは……りぃの意思じゃなくて、家のためになる事がりぃの幸せのだと履き違えてるんだ。それをわかってるから、りぃも何も言えずにいる。
「今回の事件は、里衣子さんを救うために起きた」
「え……?」
驚きの反動で顔を上げたりぃは、弾かれたように拓海先輩を見る。八の字に下がった眉は、次に発せられる言葉を恐れているように見えた。
「鏡が割れて、取引先との信頼関係が崩れて救われるのは誰だ。そして、それを心から願う人……里衣子さんにはわかるはずだ」
「ま、まさか……」
りぃの顔が青ざめていく。そしてゆっくりとその視線がある人に向けられた。
「ちなみに、庭に植えてあるユウガオだが……はかない恋と罪……という意味があるらしいな」
拓海先輩の言葉に、私は気づいてしまった。
りぃの縁談を阻止したい人ってまさか。私は否定したい気持ちで、頭に浮かぶ人物へと視線を向けた。