「ふふっ、拓海先輩ってツンデレですよね」
「お前……反省してるのか」
「してますって!」
「誠意が伝わらん」
ポカリと拓海先輩にまた頭を叩かれる。最近、こうして言葉で貶されるのに加え、軽い暴力を受けている。
「私の脳細胞が死んだら、どう責任とるつもりなんですか!」
「……フンッ」
拓海先輩が鼻で笑った。うわ、絶対、脳細胞なんて元々死んでるだろ的な意味合いに違いない。つくづく性格悪いなと思っていると、先に拓海先輩が立ち上がった。
「行くぞ」
「また、レオンと追いかけっこですか?」
「そんな、非効率なことしない」
──私、その非効率なことを全力でしてたんですが。
「あいつは光る物を見つけては、小屋に持ち帰る癖があるんだろ」
「あ!!」
じゃあ、初めから小屋に行けばよかったんだ。
「私ってば、骨折り損のくたびれ儲けじゃん!」
本当に馬鹿だったなと、落ち込む。
「……ほら」
そんな私に、差し出される手。
信じられない気持ちで、拓海先輩を見上げた。
「この手……」
─掴んでいいよって、事だよね?
いやまさか、これは拓海先輩の新しいブリザード対応の可能性もある。
「まさか、お手をしろ……とかじゃないですよね?」
「……そこから突き落とすぞ」
「はい、スミマセン!」
違った、本当に手を差し伸べてくれたんだ。いつもは凍てついた氷のようなのに、拓海先輩は突然、春を連れてきたみたいに優しくなったりする。
そんな一面を見せられる度、私はこう胸が切なくなって、その表情に惹かれてしまうのだ。
「いいから、早くしろ」
拓海先輩は空いた方の手を首の後ろに当てて、照れくさそうに視線を逸らしている。
あれ、なんだか私……顔が熱い。頬に手を当てると、じんわりと熱を持っていた。