「ん……?」

レオンの口元が、キラリと光った気がして、目を凝らす。すると、レオンは咥えていたのだ、薔薇の装飾を。

「あぁっ!!」

「なんだ、近くで叫ぶな」

迷惑そうに耳をおさえる拓先輩に構わず、あれを見よ!と言わんばかりに腕を引っ張った。

「レオンの口、見てください!!」

「口……あ」

私の視線の先を辿った拓海先輩も気づいたようだった。レオンの口の中で光る、薔薇の装飾に。

──あれがあれば、拓海先輩の鑑定ができる。そうすれば、拓海先輩の力が証明できる!!

そう思ったら、衝動的に駆け出していた。

「つ、捕まえなきゃっ!!」

すると何故か、レオンまで逃げ出した。

「な、なんで逃げるの!?」

遊んでもらえると勘違いしたのか、こちらを振り返ったレオンはまんべんの笑みを浮かべている。修正、”ように”見えた。

「レオン、待って!!」

「わふ!!」

運動神経のピークは、中学2年生頃までだった。それからは下降していく一方で、直線を走っていても、すぐ息切れするから嫌になる。

なのに私はゴールデンレトリバーVS人間という圧倒的に不利な争いを廊下で繰り広げていた。