「分けてやるって、私が作ったんだもん」

「でも、もうもらったから俺の唐揚げだ」


彼の苦しげな顔が気になって仕方がなかったけれど、彼が懸命に笑おうとしている気がして、私も笑みを作った。


朝陽との神社詣では、毎日欠かさなかった。

彼が必ず教室まで迎えに来てくれるから、イヤな思いをする時間が確実に減っていた。

誰にも「おはよう」や「さよなら」を言ってもらえない寂しさは、想像以上にきつかった。
いくら慣れても、目の前で繰り返される会話に自分だけ入れてもらえないという辛さは、じわじわと私の心を侵食してきた。


「行くぞ、つぐ」

「うん」


最初は彼にそう呼ばれるのが照れくさかった。
でも、今は当たり前になった。


今日はとびきり天気がいい。
高く感じる空は雲ひとつなく、遠くの山の稜線まではっきりと見えた。