「でしょ? 好き嫌いなくさないとダメだよ。肉や揚げ物ばかり食べてたら、将来メタボになっちゃうんだから」


私は何気なくそう言った。
でもあんなに楽しそうに笑っていた彼は、一瞬真顔に戻り、ふと窓から空を見上げている。


「俺にはそんな時間……」

「朝陽、どうしたの?」

「いや、なんでもない。ま、誰かに心配してもらえるのってなかなかいいもんだな」


そうじゃないよね。
今、あなたが言おうとしたのは、そんなことじゃないよね。


「朝陽……」

「しょうがないからつぐの心配は俺がしてやるよ。お前は痩せすぎだから、俺の唐揚げを特別ひとつ分けてやる」


彼は自分の弁当箱の中から唐揚げをひとつ箸でつまむと、私の弁当箱に入れた。