「腹減ったから早く行くぞ」
「……うん」
悪びれることなく彼が足を進めるから、私も慌てて着いていった。
視聴覚室は四階の一番東。
あまり来る機会もないこの教室は、掃除するほど汚れてはいない。
「今日はこれ」
彼に弁当を渡すと、早速ふたを開き「グラタン?」と私に尋ねる。
「うん。ミートグラタン」
朝陽はチーズが大好物で、もちろんグラタンも大好きだ。
でも、今日のグラタンは……。
「いただきます」
朝陽は大きな口でグラタンをひと口頬張った。
「どう?」
「うまい。今までで食べたグラタンの中で一番かも」
それを聞いてニタついてしまう。
「つぐ、なに笑ってるんだよ」
「なんでもない」
「嘘つけ。その笑い方、なんかたくらんでるな」
バレたか……。