「今日はなに?」
子供のように目を輝かせて弁当の中身を知りたがる朝陽が、ちょっとおかしい。
「内緒」
食べてみてのお楽しみ。
「ま、いいや。もうすぐ食えるし。でもちょっと寒いな」
いつもは中庭で食べているけど、最近は気温も下がってきて、今日のように風の強い日はこたえる。
「あ、いいこと思いついた」
「いいこと?」
得意げな顔をして職員室に向かった彼は、職員室の一番うしろに掛かっているたくさんの教室の鍵からひとつ取り出し、戻ってきた。
「これ」
彼が私に見せたのは、視聴覚室の鍵だった。
「え、いいの?」
「うん。視聴覚室、俺のクラスが掃除担当なんだよ。だから平気」
お昼休みの次は短いけど掃除の時間がある。
それぞれの教室と、いくつかの特別教室がクラスごとに割り振られていて、私のクラスは美術室と渡り廊下が担当だ。