「友達か……」


私の手をやっと離した彼は、雲が流れる空を見上げて複雑な顔をする。

彼の瞳が泣いているように見えるのに、でも泣くことすらあきらめているかのようにも見える。
その複雑な表情は、あのときの早紀と似ていた。


「そんなもん、いらない」


“いない”じゃなくて”いらない”なの?

彼の言葉に驚きはしたけれど、私も同じ。
私も”いらない”。


「つぐは別だけどな」


慌てて付け足す朝陽は、うーんと大きく伸びをして「明日の弁当はなんだ?」と話題を変える。


「今食べたところでしょ」

「相当期待してるから」

「プレッシャーかけるの、やめてよ」


ケラケラ笑う彼の表情には、さっきの憂いはもう見られなかった。