「朝陽にも楽しみが必要なの?」
再び私を抱える様にしてゆっくり階段を下りはじめた彼にそう尋ねると「もちろん」と返ってきた。
彼は時々別の顔を見せる。
もうひとりの彼が明日の喜びを求めているような気がして、気になってしまう。
「それじゃ、作るよ」
「よろしく」
「でも、朝陽は私になんの保証をくれる?」
私の明日の楽しみってなんだろう。
「そりぁ、俺との楽しい会話だろ」
「会話って」
「ふー、着いた」
私たちはやっとのことで階段を下りきった。すると……。
「つぐ。悲しいときは俺を呼べ。いつだって駆けつけてやる」
突然真顔になった彼がそう言うから、胸が締めつけられる。
「朝陽……」
「いつか俺と虹を渡ろう」
彼はそう言うと大きく力強い手で私の頭をポンと叩いた。