説得力があるのかないのかわからないような彼の発言は、私の笑顔を誘う。


「弁当だってなんだっていい。明日の楽しみをひとつだけでも持っていたら、頑張れるだろ? 弁当食べちまったら、次の日の弁当。そしてまた次。あー、俺の場合は食うことがとにかく大事」


朝陽は「フ」と鼻を鳴らして笑うけど、彼の言いたいことはなんとなくわかった。


どれだけ辛くて悲しいことがあっても、明日の喜びが保証されているなら、そこまでは踏ん張れる。

死んでしまいたいと思ったとしても、せめてその喜びを味わってからにしようと思えるのかもしれない。


その役割が弁当で担えるかどうかは別として、早紀にはそれがなかったんだ。
私の卵焼きでは当然力不足だった。


そんな危うい駆け引きをしながら、生きているのかな、私たち。