「ごめん」

「俺こそごめん。もっと気をつけてやればよかった」


彼の言葉を不思議な気持ちで聞いていた。
私が彼を危険な目にあわせそうになったのに、謝るなんて……。


「違う。ごめんなさい。悪いのは私……」


どうしよう。
胸の奥の方から急になにかが込み上げてきて、私を支配する。


「ごめんなさい。ごめんなさい」

「つぐ、どうしたんだ」

「消えるから……許して……」


頬に雨とは違う液体が流れていく。


「どうした。落ち着け」


私は朝陽みたいに強くない。
朝陽が私を先輩から守ってくれたように、私も早紀を守らなきゃいけなかった。
それなのに……。


「私が消えれば……よかった」


どうせ私のことなんて、皆すぐに忘れる。


「つぐ、しっかりしろ」

「許して……」

「つぐ」