それなのに、彼が一瞬見せた悲しげな表情が、頭から離れなくなった。


急いで弁当を食べ終わると、風が強くなってきた。
ザワザワと木々が音を立て始め、茶色く変色した葉が空に舞う。


「雨が降りそうだな」

「そうだね」


帰らなくちゃいけないと思うのに、なかなか立ち上がることができない。
朝陽もまた、空をじっと見つめたまま立ち上がろうとはしなかった。


「雲……」


彼がボソリとつぶやくから空を見上げると、上空はもっと風が強いのか、雲がどんどん変形していく。


「俺たちも、変わるのかな。ずっと同じじゃなくて、変わるんだろうか……」


なぜだかその言葉が胸に突き刺さる。


「朝陽は変わりたいの?」


そう問いかけながら彼の横顔を見つめると、彼の瞳が再び悲しげな色に変化した。