でも、それではいけないと早紀が教えてくれているのかもしれない。


「つぐ早く食わないと……」

「あっ! 私の!」


朝陽は私のヒレカツをあっという間に自分の口に入れてしまった。


「うまいから仕方ないだろ」

「なによ、その微妙な言い訳」

「微妙ってなんだよ」


ほんと、微妙ってなんだろ……。
褒められているような、まるめこまれているような?

朝陽がクククと笑うから、私までプッと吹き出してしまった。


「笑えるじゃん」

「えっ?」


朝陽は私の両頬に人差し指を置き、口角をギュッとあげてみせる。


「うまいもん食ったときくらい、笑え」


そんなことを言うくせに、彼の目はどこか悲しげに見える。


「朝陽?」

「あ、鼻も上げとく?」

「やめてよ!」


慌てて顔をそむけると、彼は「あはは」と声を上げて笑った。