「ふー、満足。ごちそうさま」
おにぎりがもうひとつあっても食べてしまいそうな勢いの彼は、満足げな顔をして空を見上げる。
「生きているから、うまいもん食えるんだな」
「生きているからなんて、おおげさでしょ。毎日ご飯食べてるくせに」
あれ? こんなこと前にもあったような……。
『生きてるから冷たいんだもん』
そのとき、どこからか早紀の声が聞こえた気がして、慌てて辺りを見渡した。
そうだ、あの日……雨が冷たいと文句を言った私に、早紀はそう言った。
「つぐ、どうした?」
「えっ……ううん。なんでもない」
そっか。生きているから、こうして朝陽と楽しい時間も持てるんだ。
早紀がいなくなってから辛いことばかりで、そんなふうに前向きに考えられなくなっていた。