結局この長い階段を自力で下りる自信もなくおぶさると、彼は軽々立ち上がり、足を踏み出す。
「大丈夫だ」
彼は私の予想に反して意外にも筋肉質で、しっかりとした足取りで階段を下りていく。
それでも、ガタガタの石でできた階段を踏みしめるように進む彼の姿を見ていると、申し訳なくなる。
とはいえ、足の痛みは増すばかりで、背中でギュッと目を閉じて痛みに耐えた。
階段を下りきると、彼は私を背負ったまま走り出した。
「君、名前は?」
「つぐみ。高瀬(たかせ)つぐみ」
「俺は、九条朝陽(くじょうあさひ)」
やっと自己紹介が済むと、朝陽の息づかいが激しくなり始めた。
「下りるよ」
「もう着くから大丈夫」
彼はそう言うと、そのまま全速力で駆け抜けていく。