「うまっ。この卵焼き、チーズが入ってるじゃん」
次々と箸を口に運ぶ彼を見ていると、圧倒されて自分は食べるのを忘れていた。
「うん。他にもいろいろ入れるよ。ハムとか、シーチキンとか……あっ、梅も意外とおいしいんだから」
それから自分の卵焼きを箸でつかみ、心の中で早紀と会話を交わす。
『早紀、今日はチーズね。朝陽も好きみたい。一緒だね』
「つぐ、食わないのか?」
「あっ、食べるよ。いただきます」
朝陽はちょっと変な顔をしたけど、またすぐに弁当を食べだした。
彼と過ごす時間は、心地よかった。
早紀を失ってから味すらよくわからなくなっていたのに、今日のきんぴらはちょっと甘すぎる。
三人で一緒に食べたかったな。