「九条くんはなにも悪くありません。私が悪いんです。先輩たちになにも言い返せなかった私が……」
『クラスメイトを売った』とまで言われ、悔しくてたまらなかったのに、朝陽みたいに怒りをあらわにできなかった。
「つぐのせいじゃない」
朝陽は私のところまで来て、部屋から出そうとする。
「わかった。高瀬が先輩に絡まれて、九条が助けたということでいいんだな」
「はい」
私がそう返事をすると、先生は大きな溜息をついた。
「三年の女子からも話を聞く。まぁ、あいつらも逃げてるから悪かったところがあるとわかっているんだろう。だが、九条は大切な時期だということを忘れるな」
「わかりました」
朝陽はまだなにか言いたげだったものの、そのまま私を連れて生徒指導室を出た。