朝陽がドアを蹴ったせいで、他のクラスの生徒まで集まってきてしまった。
好奇の眼差しの中で朝陽にそう言われた先輩は、手を握りしめうつむいてしまった。


「だまされてるよ……」


消えそうな声でつぶやいた先輩の胸ぐらを朝陽がつかむ。


「お前、殴られたいのか!」

「朝陽、もうやめて」


私は松葉づえを放り出し、慌ててふたりの間に割って入る。

お願い。誰かが傷つくのは、もう、たくさん……。

早紀は傷つけられて命を絶ったの。
うしろで見ているクラスメイトに。


気がつけば涙が止まらなくなっていた。
それに気がついた朝陽は、先輩から手を離してくれた。


「九条、なにしてる!」


誰かが呼んだのだろうか。
先生が飛んできて、朝陽を捕まえた。

その隙に先輩たちは走って逃げていく。