「だって、この子が……」


それでも弁解しようとする先輩の声が震えている。


「つぐみがお前になにかしたのか?」

「違う、けど……。朝陽くん知ってるの? この子、あの事件の子なんだよ。係わったりしたら朝陽くん……」


――ドン。

先輩がそれ以上言えなかったのは、朝陽がおもいきり教室のドアを蹴ったからだ。


「俺が自分の意思でつぐと話してる」


朝陽の目がつり上がった。
あの犬に向けたときと同じ目をしている。


「でも、私は朝陽くんのことを思って……」

「なにが俺のことを思ってだ。違うだろ。お前自身のためだろ。つぐみと俺が話しているのが気に入らないんだろ? だけどな、俺は他人を傷つけて平気なヤツなんかと付き合うつもりはない」