「ちょっとひどいぞ。病院に行かないと」


彼はポケットからハンカチを取り出して傷口を強く縛り上げ、私に背中を向ける。


「ほら、こい」


私に背中を見せた彼はそう言うけれど……まさか、私を背負ってあの階段を下りようと?


「なにしてる。早く」


動かない私にしびれを切らした彼は、私の腕を取り自分の肩に掛けさせた。


「でも……」


彼は背が大きく、百七十五センチは超えている。
でも、体の線は細い。

すごく太っているわけじゃないけど、それなりに体重のある私を背負ってあの急な階段を下りるなんて、できるはずがない。


「心配するな。絶対に落としたりしない」


そんなことを心配しているわけじゃないんだけど……。


「いいから、早く」

「ごめん、重いかも」