やっぱり、朝陽のことだ。


「そう、です。私が足をケガしたので……」

「あなたのケガなんて、朝陽くんに関係ないでしょ?」


最初から私の話を聞くつもりなんてない先輩は、怒りを隠そうとしない。
真ん中でいきり立っているこの先輩は、おそらく朝陽のことが好きなんだ。


「だいたいあなた、クラスメイトを売ったんでしょ?」

「売った?」

「あの子が死んだからって、クラスメイトのせいにして」


一瞬、なにを言われているのかわからない。
でも、すぐに体がカーッと熱くなり、激しい怒りでめまいがする。すると……。


「俺の女になんの用だ?」

「朝陽……」


朝陽が現れ、三人は顔色を変える。


「つぐみを傷つけたら、俺が許さない」


朝陽は私の前に立ち、低い声を絞りだす。
それは冷たくて、鋭くて……胸にグサッと刺さって抜けなくなりそうな、声だった。