「それなにりは」
早紀がいなくなる前よりは、食べる量が減っている。
でも、義務のように食べ物を口に送っている。
「そっか。それじゃあ、明日からモリモリ食べさせてやる。俺の分も作ってこいよ?」
なぜだか命令口調の彼だけど、それがありがたかった。
それから朝陽と私の不思議な関係は始まった。
「おはよ」
学校の最寄駅で彼は必ず待っていてくれる。
どうやら相当人気者らしい朝陽のことを、女子生徒はチラチラと見ていく。
「朝陽、おはよ」
「人間、学習するもんだな」
彼に近づくと、彼は目を見開いている。
「学習って?」
「つぐ、歩くの速くなってる。松葉づえマスターに昇格」
「なに、それ」
だけど「プッ」と吹き出してしまった。
『松葉づえマスター』だって。そんな発想新鮮すぎる。