「いると、いいな」

「だから、いるって言ってるだろ。頑固だなぁ」


今度は朝陽がクスクス笑いだすから、私もつられて笑ってしまった。


「ほら、お嬢様、どうぞ」


そして彼はやっぱり私に背を向ける。


「お嬢様って……。ありがとね、朝陽」


素直に彼の背中に乗ると、力強くグイッと立ち上がった。


「朝陽って、意外と筋肉ついてるんだね」

「『意外と』は余計だ」


制服を着ていると華奢に見える。
私を背負ってこの階段を往復できるようには見えない。


「つぐ、今日のパンツ、白だろ」

「嘘! 見たの?」

「どうかなぁ」

「最低!」


彼の手が自由にならないのをいいことに、頭に緩いげんこつを一発。


「痛っ。冗談だって」

「朝陽が言うと冗談に聞こえない!」

「信用ないなぁ」