社の周りは木が生い茂っているものの、この時期になると葉を落としてしまう木も多く、防風効果はない。
風が体を叩きつけてくる。


「今日は帰ろうか」

「……うん」


朝陽に促されたのに、立ち上がりたくなかった。
交わした言葉は少ないのに、彼との時間が終わることが急に寂しくなった。


朝陽は立ち上がると、私に手を出す。
つかまれ、ということだろう。

仕方なく手を伸ばすと、彼は私の手をギュッと握る。


「俺、毎日来るから」

「えっ?」

「明日はコート持ってこないとな」


それって……また一緒にいてくれると言っているの?


「でも、ここは朝陽の大切な場所でしょ?」


私が来たら迷惑に違いない。
裏に隠れていたのだって、『ひとりでいたくて』と言っていた。