「つぐ」


すると彼は目を閉じたまま私の名前を呼んだ。


「うん」

「彼女はきっと、つぐに笑っていてほしいはずだ」

「そう、だね」


『ありがとう』とだけ残して逝った早紀はきっと――。

朝陽はやっと目を開け、私の頭をクシャッと撫でた。


それから空を見上げた朝陽の目は、晴れ渡った青空を映している。
だけどその鮮やかなブルーとは対照的に、彼の瞳は悲しげな色に変化した。

笑うことなんて、簡単だと思っていた。
それなのに、本当はこんなに難しい。


それから私たちは言葉を交わさなかった。

それでも、彼と気持ちを共有できているような気がするから不思議。
でも、それがどうしてなのかは私にはわからなかった。


「つぐ、寒くないか?」

「ちょっと、寒いかな」