――キャン、キャン。
まるで小型犬に代わってしまったかのような犬の鳴き声にハッとして、「もう止めて!」と声を張り上げると、やっと手が止まった。
そしてその瞬間を待っていたかのように、犬は走り出し去っていく。
「大丈夫か!?」
棒をポーンと放り投げた男の子は、私のところに駆け寄ってきて、足に垂れる血を見つけ、目を丸くする。
「血が……。噛まれたんだな」
「うん……」
私がカクカク頷くと、彼は私を不意に抱き上げ、社の階段に座らせた。
「見るぞ」
「あ……」
彼は拒否するまでもなく私のスカートをまくり上げる。
「痛っ」
「君は見ないで」
傷口を見た途端、余計に痛みが増してきた。
犬に襲われたあの時は無我夢中だったからか、これほどまで痛みを感じなかったのに。