朝陽に泣き顔を見られたくなくて慌てて手で拭うと、彼は小さい子をあやすように、私の頭をポンポンと叩いてくれた。
「そんなの、つぐが背負うことじゃない」
皆、そう言ってくれる。
早紀のお父さんとお母さんでさえ「一緒にいてくれてありがとう」と私に頭を下げる。
でも、なにもできなかった私のことなんて、いっそ責めてくれた方が楽なのに。
「でも、いじめを学校が隠ぺいしたっていう噂、本当なんだな」
「……うん」
ギュッと唇を噛みしめると、ほんのり鉄の味が口に広がる。
でも早紀は、この味すらもう味わえない。
「クソッ。世の中腐ってる」
朝陽がそうやって悔しがってくれるだけで救われる。
彼はそう言うと、苦しげに顔をゆがめ目を閉じてしまった。
なにか考えているのかもしれないけれど、私には彼の心をのぞけない。