でも、私が聞きたいのは、そういうことじゃなくて……。


「そうじゃなくて、私があの事件の……」


そこまで言うと、ふと早紀の顔が頭に浮かんで口をつぐんだ。

一年生ではなくても、”あの事件”といえばピンとくるはずだ。
早紀の死は、学校に大きな動揺をもたらした。


「それは知らなかった。でも、朝、誰もつぐの手伝いをしないのを見て、そうかもしれないって……」

「そっか……」


わかっちゃったんだ。
それなのに教室まで来てくれた彼に、感謝しなければ。


「私、助けられなかったの。それだけじゃない。早紀が死んじゃった原因を暴くことすらできない……」


遠くの山が、赤や黄色に染まっているのを見ていたつもりなのに、私の目にはなにも映らなくなった。

泣くまいと思っていたのに、勝手に涙が流れていく。