「つぐ、料理できるんだ」
「えー、できないと思った?」
「まぁ、な」
失礼な。
隣に座る朝陽を腕でドンと押すと、彼は「怒るなよ」と笑う。
彼と一緒にいるのは楽しい。
まだ出会ったばかりなのに、笑っていられる。
でも、私には聞かなくちゃいけないことがある。
「ねえ、朝陽」
遠くの山に視線を移したまま口を開くと、彼は私の顔をのぞきこんだ。
「なに?」
「私のこと、知ってた?」
私が早紀が電車に飛び込んだとき一緒にいたことや、いじめがあったと告発した張本人だということを。
「つぐが、この神社にいつも来ていたことは知ってた。俺もここが好きでよく来てたんだ。でもひとりでいたくて、つぐが上がってくる気配がすると、裏に隠れてた」
私はこんな寂れた神社にいつも来ている人がいるとは思ってもいなかったから、全然気がつかなかった。