彼には感謝している。
私を背負って階段を上がり下りしてくれたことも、あの犬から助けてくれたこともそうだけど、なにより、学校で私に話しかけてくれたから。
「そうだなぁ……」
『見返り』なんて言ったくせして、なにも考えていなかったようだ。
「昼飯、とか?」
「え、お弁当作ればいいの?」
「え、弁当作れるの?」
私の言い方を真似した朝陽に「もう」と溜息をつきつつ、そんなことでいいのかと思った。
「作れるよ。毎日自分で作ってるもん。朝陽はお母さん?」
「いや、購買の焼きそばパン」
体の大きな、おそらくまだ育ちざかりの朝陽が、焼そばパンだけで足りるの?
「お腹空かないの?」
「空く。だから弁当に決定」
勝手に決めた朝陽は、目尻を下げて優しく微笑む。