「いいから。お前のこと、もっと知りたいんだ」
「えっ?」
思いがけない朝陽のひと言に驚き彼の顔を見つめると、ニッと笑った彼が「そういうこと」と私の腕を引っ張る。
「ちゃんとつかまれよ。落とすぞ」
なによ、昨日は落とさないって言ったじゃない!
だけど、ゆっくり一歩ずつ階段を上がり始めた朝陽の背中は、温かかった。
彼に背負われたまま鳥居をくぐると、ふっと空気の流れが変わった気がする。
なんだか別の世界に入り込んだような気さえするのは、ここに来ると気持ちが解放されるからだろうか。
「朝陽、ありがとう」
社の前の階段に私を下ろしてくれた彼にお礼を言うと、「見返り、期待してる」と頬を緩ませる。
「見返り? なにがいいの?」