そんな……私は彼女じゃない。
慌てて否定しようと思った瞬間、「じゃあな」と会話を冷たく終わらせた朝陽に驚き、なにも言えなかった。
「そっか。邪魔したな」
裕一先輩も朝陽の不機嫌がわかったのか、私たちをあっという間に追い抜いて、振り向くことすらしなかった。
「あの人、お友達、だよね」
おそるおそるそう聞くと、朝陽は私の目を見ることなく「そうかもな」とつぶやく。
ケンカでもしているの?
友達というわりにはよそよそしい朝陽の態度に首を傾げた。
「俺、神社に行くけど……」
「ホントに? 私も行っていい?」
「もちろん」
卵焼きを作ったあの日から、神社は唯一私が安らげる場所になっていた。
ゆっくり静かに誰にも邪魔されることなく、早紀と会話が交わせる気がしたからだ。