彼はなにも言わずに私の荷物を持つと、ゆっくり歩きだした。


「冷えてきたな」


朝陽は高い空を見上げボソリとつぶやく。


「そうだね」


私も同調して彼の横顔を見上げると、なぜだか悲しげな表情をしているからハッとした。


「朝陽、どうかした?」

「ん? ごめん。俺、冬は嫌いでさ」


彼は取り繕うようにそう言うけれど、無理やり上げた口角はすぐに元に戻ってしまった。


「朝陽」


するとそのとき、私たちのうしろから誰かが声をかけてきた。


「裕一(ゆういち)か」


朝陽の友達だったようだ。
彼は振り向いて会話を始めた。


「お前、いつの間に彼女作ったんだよ」

「あー、今の間?」