「早紀」
彼女の名を口にするたび、後悔の念が湧いてくる。
でも……。
「私は生きる。早紀の分も、生きてみせる」
もう私にできることはそれしかない。
太陽に向かって卵焼きを差し出すと、早紀の笑顔が一瞬見えた気がする。
「私の作った卵焼き、おいしいでしょ?」
一粒だけ頬を伝い落ちた涙は、私を強くする。
「早紀が食べないと、私が食べちゃうんだから」
再び口に入れた卵焼きは、しょっぱかった。
それから私は徐々に食欲を取り戻し、学校に復帰した。
だけど、クラスメイトが私を見る目は冷たかった。
それは……やっと食べられるようになったあの日、先生にいじめがあったことを打ち明けてしまったからだ。