点滴が終わると、「食べられなければすぐに来なさい」と言ってくれた野上先生に頭を下げ、すぐに家に帰った。

そうやって苦しい胸の内を理解してくれる人がいると思うと、踏ん張れそうだった。


次の日、ずっと仕事を休んで付き添っていてくれた母を半ば無理矢理仕事に行かせ、私はキッチンに立った。


「早紀。なに入れる? のりと、チーズと……あっ、大葉もある」


早紀との約束を果たそうと思った私は、卵を冷蔵庫から出して、卵焼きを作ることにしたのだ。

それぞれの材料を真ん中に入れて巻いた卵焼きは、ひとりでは食べられない量。


「早紀、一緒に食べよ?」


テーブルに並べたものの、やっぱり食べる気になれない。

私は卵焼きを弁当箱いっぱいに詰めると、家を飛び出した。