野上先生は少し苦しげな顔をしたものの、すぐに笑顔を作った。
「だから、早紀ちゃんやつぐみちゃんが弱かったわけでも、悪かったわけでもない。これだけは断言する」
そう言ったときの先生の顔は、凛々しかった。
「それに、早紀ちゃんも、つぐみちゃんを恨んでるなんてことは絶対にない。だって卵焼きの約束、したんでしょ?」
そう言われて、やっと感情の波が緩やかになってきた。
「早紀ちゃんはつぐみちゃんの前で無理して笑っていたわけじゃないんじゃないかしら。つぐみちゃんといるときは、本当に幸せだったのよ」
そうなのか、な……。
だけど、ここに来てよかった。
まだすべてを呑みこめたわけではないけれど、高ぶったままだった感情が少し落ち着いてきて、冷静になれそうな気がした。