私も……早紀を死なせてはいけなかった。

唇を噛みしめうつむくと、「たくさん泣きなさい」と先生は言う。


「でもね、泣いたら進むの。早紀ちゃんはそう望んでる」


本当はわかっていた。

早紀は私を苦しめたくて目の前で逝ってしまった訳じゃない。
最期に一緒にいたい人に私を選んでくれたに違いない。


「早紀に卵焼きあげるって約束したんです」

「うん」

「一緒に虹が見たかった……」


ポロポロあふれ出した涙は、簡単には止まらない。
それでも先生はそのまま泣かせてくれた。

ひとしきり泣くと、先生は私に点滴を始めた。


「早紀ちゃんのこと、吐き出してみる?」


チクンとした痛みの後、点滴の液がポタポタと垂れ始めた。

先生は速度を調節すると、丸椅子を持ってきて、処置室のベッドに横たわる私の横に座った。