便箋を封筒にしまうと、再び虹に触れる。


「見たかったのかな、虹」


雨上がりにしか現れることがない虹は、早紀の望んでいた未来なのかもしれない。
だけど、最後まで雨はやまなかった。


それから私は学校に行けなくなった。

一日中ベッドの上で膝を抱え、早紀のことばかり考えて涙を流す。
気がつけば何時間も。


まともに食事もとらない私を心配した母が、再び野上先生のところに私を連れていった。
内科医だとばかり思っていた先生は、心療内科の先生だった。


「つぐみちゃん、ご飯食べられないんだって?」


どうせ「食べなさい」と叱られるんだと思ったのに、「点滴しようか」と言われて目を丸くした。


「食べられるわけ、ないよね。でも、私はつぐみちゃんを死なせるわけにはいかないの」