退院の許可が出て家に帰ると、ピンクの封筒は憎らしいくらいにシワひとつない状態で保管されていた。
開けるのが怖くて、表に薄く描かれている虹に指を滑らせる。


「早紀……」


途端に熱くなる目頭から、ポタリと涙がこぼれた。


「早紀……」


私が雨に文句を言った時『生きてるから冷たいんだもん』と言った彼女は、あのときどんな気持ちだったのだろう。


「生きてなくちゃ、虹だって見えないじゃん」


唐揚げ、全部あげるのに。
卵焼きあげる約束したのに……。


読まなくちゃ。
早紀の最期のメッセージを、ちゃんと読まなくちゃ。


手でごしごしと涙を拭いて震える手で封筒を開け、中に入っていたたった一枚の便箋を開いた。