さっきからこれが夢だと思いたくてたまらない自分に気がついていた。
でも、本当は現実だということも。


私が首を振ると、先生は小さくうなずいた。
眠れるわけがない。早紀が――あんなことになったのだから。


「早紀はどうして……」


思わず漏らしたひと言に先生がすぐさま反応する。
化粧っ気がないのに、長い睫毛をしていてはっきりとした顔立ちの彼女は、いろんな表情をして私に接してくる。

あのときの早紀の顔は……なにを訴えていたのだろうか。


「ごめんね。私にはわからない」


先生は伏し目がちにそう言うけれど、私は本当は知っていた。
早紀が自ら命を絶った理由を。


「早紀ちゃんと、ホームでなにか話した?」


先生は私の手を握り、声のトーンを落として話しかけてくる。