点滴は、私の頭の中から悪い物を追い出し切れていないようだ。
再び激しい頭痛が襲ってきて顔をしかめる。


「ゆっくり深呼吸して。急いで思い出さそうとしなくていいの」


そんなこと言ったって、勝手に脳が暴走を始める。

あの時早紀は……電車が走り込んでくるのをわかっていて、自分から線路に……。


「早紀、早紀が……」


左のこめかみ辺りがドクンドクンと波打つように痛い。

私が早紀の名を何度も叫ぶと、先生はあきらめたように口を開いた。


「早紀ちゃんね……」


先生の少し悲しげな表情を見ていると、ますます頭痛が激しくなる。
イヤだ。その先は聞きたくない。


「残念、だった……」


嘘……。
体から力が抜けていく。

多分これは夢で、明日早紀に会って話したら、『勝手に私を殺さないでよ』と叱られる。