あれ……。この笑い方、さっき見た?

でも、目が違う。
もっと悲しげで、怒りに満ちて……。

いや、さっきの母のようにちょっとホッとしていたような。


「早紀……」


そうだ。
さっきからどこかで見たと思っていたのは、早紀の顔だ。


「覚えてる?」


すると、早紀のことなんて知らないはずの先生がそう聞くから、首を傾げた。

『覚えてる?』って、早紀のその複雑な顔のこと? 

いや違う。あのとき……。
早紀の姿が目の前から消え、プププーというけたたましい警笛と、キキキキーという甲高い金属がこすれる音と、ドンとなにかぶつかるような鈍い音がして……。


「早紀は?」


いてもたってもいられずベッドから飛び起きると、先生は私の肩を押さえ、ベッドに寝かし直した。