「ありがと。つぐがいてくれたからだ。つぐを笑わせたかったんだから、泣くな」

「だって……」


彼は呆れた声を上げるけど、ここまで来るのに平坦な道のりではなかったのだから、仕方ないじゃない。
うれしい涙は流させてよ。


「しっかし、寒いな」


それから彼は私をいつもの場所に座らせ、自分も隣にくっついて座った。
そして「つぐ」と私の名前を呼ぶ。


「なに?」

「俺……今すごく楽しいよ」

「朝陽……」


私も楽しい。すごく楽しい。
朝陽と一緒に笑える幸せは何物にも代えがたい。


「諦めなくて、よかった。未来は、続いてた」

「……うん」


再びジワジワと瞳が潤んでくる。


あの日、もし朝陽が裕一先輩に手にかけていたら、朝陽も死んでしまっていた気がしてならない。

あそこグッとこらえた朝陽に、神様がご褒美をくれたのではないかと、勝手に思っている。