そしていつもの定位置に座り、お弁当を広げる。
「久しぶりだな。つぐの弁当」
今日は母に教えてもらった野菜入りのキッシュを詰めてある。
こうしてふたりで同じものを食べていられるのは、本当に些細なことだけど、幸せだった。
「ちょっと作りすぎたかも」
張り切りすぎて、弁当箱は満タンだ。
「いや、食うよ。うまっ」
キッシュを口に入れた彼は、満面の笑み。
「トマトとニンジンと玉ねぎ克服」
「は? これに入ってるのか?」
「そう。でもおいしいでしょ?」
朝陽は箸でつかんだキッシュをじーっと観察して、野菜を探している。
「あぁっ、このオレンジのがニンジンだ。でもうまいわ」
そしてもうひとつ口に放り込んだ。
「これからは野菜もたっぷり食べてもらうから」