しばらくすると、私の予想に反して、女の先生が入ってきた。
長い髪をひとつに束ね優しい笑みを漏らす先生は、「初めまして、野上(のがみ)です」と、まるで初めて同じクラスになった同級生のような挨拶をする。
母も一緒かと思いきや、先生だけだった。
「つぐみちゃんね。気分はどう?」
『どう?』なんて抽象的な聞き方をされても、なんと答えたらいいのかわからない。
頭痛はすっかりなくなっていたけれど、なにかモヤモヤした感覚が残っている。
私が答えられないでいると「頭は痛い?」と聞きなおしてくれたから、首を振った。
「他に痛いところはあるかしら?」
こういうのを問診、というのかななんて頭の片隅で考えながら「大丈夫です」と答えると、野上先生は口角をあげて微笑み、うなずいた。