朝陽はそれから一ヶ月ほど入院し、無事に退院した。
退院した次の日は丁度土曜日で、彼の希望もあり、神社でふたりきりのデート。
毎日通い、神様に弁当を届けることは続けていたけれど、朝陽と一緒に見る景色は違った。
一ヶ月前とは違い、遠くの山も、もう葉を落としてしまった木ばかりが目立ち少しさみしい。
それでも、木々は死んでしまったわけではない。
また春になって青々とした葉を生み出すために今は寒さに耐えているだけ。
生き続けるために、耐えているのだ。
朝陽も耐えに耐えた。
そうしてやっと、春が来た。
「また、ここから始められるんだな」
彼は感慨深くそう吐き出すと、社に向かって手を合わせる。
私も同じように手を合わせて、ふたりでここに来られたことのお礼を言った。