「だから俺が今度はそいつを喜ばせたい。幸せにしたい。それにはさ、ずっとイライラしてるわけにはいかないんだよ」
もう、声を殺せない。
バカみたいにわんわん泣くと、「つぐ」と朝陽が私を呼んだ。
「それで、いいか?」
「……うん。うん」
やっと頭をあげた裕一先輩も、顔をグシャグシャにして泣いていた。
「裕一、その代わりお前は自力で大学に合格しろ。何年かかってもいい、自分で未来を切り開け」
「わかってる」
裕一先輩は何度も何度もうなずいている。
「俺も、お前には負けない」
「あぁ」
やっと立ち上がった先輩が朝陽の近くに歩み寄ると、朝陽は先輩のお腹に軽いパンチを入れた。
「男がビービー泣くのはみっともないぜ」
「そうだな。本当に、すまなかった」
もう一度深く頭を下げた先輩は、病室を出ていった。